ところが、ぴよ子一人じゃなんだから、ということで、決心して下の子を作ったら、それがなんと双子!!
妊娠初期から体調が悪く、病院からも、1日でも長くお腹の中で育てることができるように、と、極力体に負担をかけない生活を心がけるように指導された上に、実際、体のあちこちに尋常でない変化が起こり、一日の4分の3は、横になっているような状態を強いられて。
丁度その頃2才半のやんちゃ盛り、遊び盛りを迎えたぴよ子の相手をしてあげるのも一苦労の状況になってしまいました。
幸い、一人でいても、何か作ったり、描いたり、読んだり、と、誰に強いられなくても、上手に機嫌良く遊べる子だったので、その辺は助かったのですが、困ったのは、何か悪戯したり、言うことをきかなかったりした時。
その育児書通りに躾たいのはできなくなってしまったのです。それに加えて、体の不調からくるストレスで、わたしは徐々に、手っ取り早い方法で叱りつける躾にスイッチしていってしまいました。
そして、双子のやもちゃん達が生まれ、もう何がなんだか分からないような一種のパニック状態の中での子育てが始まり、いつの間にか、言葉の通じるぴよ子には、それこそ
自分が気持ちに余裕を持てないことのはけ口のように、厳しい言葉で叱りつけてしまうことが、頻繁に起きるようになっていきました。
それでも、やもちゃん達が大人しく揺りかごの中に収まっている間はまだ良かったのですが、はいはいを始め、本格的に離乳食が始まるころには、なんだか生活の全てにストレスを感じるようになってしまい、子育てを楽しむ余裕など、全くなくなっていってしまっていたのです。
何もかもイヤ。一生懸命作った離乳食を全然食べてくれないのも、寝かしつけようとしても、甘えてふざけて全然寝てくれないのも、言葉が通じなくて、何で要求がましく泣いているのか、も、しょっちゅう熱を出して何週間も続けて病院に通わなくてはいけないことも、全て全てイヤでイヤで仕方なくなってしまったのでした。
そうこうしている間にも、ぴよ子が幼稚園に入る年を迎え、昼間はやもちゃん達だけを相手にしていればいい日々になり、少しだけ、気持ちの負担が軽くなりました。
それでも、今度は幼稚園の送り迎えや毎朝のお弁当作りと、それまでしばらく、一般世間とは全然違うリズムの中で暮らしていたわたしにとっては、辛い生活の変化が訪れました。何しろ、ぴよ子が園に入るまでは、朝の9時起床は当たり前、少し夜更かししたら10時過ぎまで睡眠を貪るなんて、しょっちゅうあったのです。
もともと時間に縛られる、という強迫観念があったわたしは、縛られるのがイヤな余りに、規則正しい生活を送ることから意識的に逃げていた感がありました。時計通りにコトを進める、例えば、決められた時間に決められた場所に行く、ということすら、ある種の恐怖感を感じて、遅刻しないことには、辿り着くことができない、といった有様でした。
そんなわたしが、ぴよ子の園の生活に合わせて、生活スタイルを社会に合わせなくてはいけなくなり、それは思った以上にわたしにとっては負担を強いられることになっていたようです。
やもちゃん達も、どんどん活発になってきて、家にいても一瞬も目が離せない、子供に自分の全てを操られてしまっているような束縛感。やもちゃん達は、ぴよ子の時のように十分に手をかけてあげることができず、ぴよ子の時に活躍した育児書すら読めずに、自分の理想通りに子育てができていない、とう憔悴感や自責の念。
あれもこれも、みんなあたしがやらなきゃいけないんだよね、、、世間一般では当然母親の仕事だもんね、、、という妙な背負い込み。
全て、自分で膨らませていった、いわば身から出たサビのようなもので、まるで鎧のように自分の自由を自ら制限していってしまったのでした。
そして始まったのが、ぴよ子に対する、虐待に限りなく近い言葉の暴力と、やもちゃん達に対する、ひっぱたくなどの、肉体的な暴力だったのでした、、、。自分がイヤでイヤで、情けなくて仕方なかったのに、どうしても止めることができなかった。
幸い、訳もなく虐待紛いなことをする、というところまでは行かなかったけれど、叱る理由を探しては叱り飛ばす、というような心境くらいには、至っていたかもしれない。今となっては、当時の自分の心境をよく思い出せない、ということが、既にその頃の異常な事態を物語っているように思います。
このままじゃ良くない、このままじゃ、わたしが絶対止めようと思っていたことを、ますますエスカレートさせてしまうだけ。子供の気持ちがわたしから離れてしまう、子供が親の顔色を伺って、安心して親に心を開けなくなる、甘えられなくなってしまう。何より、子供らしい子供時代を送れなくなってしまう、、、。
頭では分かっていても、もう自分だけではどうしようもない所まで行ってしまっていたようでした。子供を叱りつける、子供が言い返してくる、更に叱りつける、子供がストレスを抱える、そのストレスをまたわたしにぶつけてくる、それを叱りつける、、、。
地獄のような悪循環のドツボにはまってしまって行ったのでした。
わたし、今おかしい、正常じゃない、最後の心の悲鳴を聞いたような気がして、わたしはある日、同居しているお義母さんに相談してみたのでした。わたしはすごく厳しく躾られて、自分の子供にも厳しすぎるところがあるみたい、おかあさん、見ていて心配だと思うけど、どう思いますか?って。
おかあさんは、その時は笑って、誰でもあるよ、大変な時期だし仕方ない、大丈夫だよ、そんなに心配する程な感じじゃないよ、って言ってくれたのです。